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そこ知り!019:低出生体重児とカンガルーケア

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今回は、低体重出生児におけるカンガルー・マザー・ケア(KMC; Kangaroo Mother Care)の親子それぞれに与える効果について、2014年にイギリス ランカスター大学・マンチェスター大学の臨床心理学者らがまとめたシステマティック・レビュー(系統的レビュー:複数の論文を分析したもの)の論文を一緒に読んでみましょう!

Effects of kangaroo mother care on maternal mood and interaction patterns between parents and their preterm, low birth weight infants: a systematic review.
著者:Eirini Athanasopoulou, John R.E. Fox
雑誌:Infant Mental Health Journal

この論文では、複数の研究データを総合して、低体重出生児とその親の間における相互作用の効果などについて、KMCの効果の結論を得ることが目的でしたが、研究手法などが異なることから、一定の結論は得られなかったそうです。しかし、低体重出生児の出産でも、KMCによって、母親の精神的状態や親子間の相互関係に好ましい影響を与える可能性が示唆されています。

KMCの方法
乳児の顔を横向き(気道確保)、体全体は縦抱きで、母親や父親などの胸に触れるようにします。適切な体温維持のために、乳児は帽子、靴下、またはおむつを着用し、通常は親の服の下に入れるか、毛布で覆います。乳児の体位保持のために、伸縮性のある布バンドが使用されることもあります。

1. この論文の結論

  • KMCは、母親が積極的に赤ちゃんの世話をすることにつながり、母親自身の感情のコントロール感を高め、その結果、ストレスやうつ症状を軽減したり、レジリエンスを高められる可能性がある。
  • 医療リスクの高い超低出生体重児の親は、ストレス、心配、抑うつのレベルが高すぎてスキンシップでは緩和できないため、KMCの恩恵を受けにくいという可能性がある。
  • KMCを行う親に適切なサポートと情報を提供できるよう、医療スタッフには教育とトレーニングを行う必要であり、KMCに関する一貫したプロトコルとガイドラインを医療施設で実施する必要がある。
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2.レビューの方法

<対象研究の選定>
・電子データベース(Academic Search Complete (ASC; EB-SCO), AMED (Alternative Medicine) (EBSCO), BMJ Journals Collection, Cochrane Library, PsycArticles (EBSCO), PsycINFO (EBSCO), PubMed, ScienceDirect (Elsevier), and Web of Science)を用いて関連する研究を検索した後、13試験を特定した。

3.結果

早産・低出生体重児の母親の精神的状態に対するKMC:9試験
KMCを実施した母親(KMC群)とKMCをしていない母親(対照群)では、5試験においてKMC群の母親の気分に有為な差がみられたが、残りの4試験では差がみられなかった。
有意差の見られた5試験において、KMC実施群では、非実施群と比べて乳児のケアが上手くできて、乳児と離れてもストレスを感じることが少ない傾向にあり、うつ症状が少なく、自身の乳児が正常であると思える傾向もみられた。一方で、KMCを実施した母親はサポートされていないと感じたり、社会的に孤立していると感じるケースもあったと報告された研究もあった。乳児の医療的リスクの高さは母親の精神的状態を左右する、重要な要因であることが分かり、高リスクな乳児の親はKMCによって状況が改善することはなかった。

KMCと親ー低体重出生児・早産児の相互作用のパターン:9試験
9つの研究があり、うち7件の研究では、対照群に比べ、KMC群が有為に母子間の相互作用の状況が改善していたと報告されている。他2つの研究、KMCと対照群の間で母子間の相互作用パターンに有為な差は認められなかった。
有為な差がみられたKMC群では、、、
●母親は赤ちゃんへの強い愛着を示した
●ポジティブな相互作用(母親がより多く乳児を見たり、触れたりして、よりポジティブな感情を示していたこと、乳児のしぐさ等により適応的)
●3ヶ月の時点で、母親は赤ちゃんに関わる回数が増え、乳児との関わりから多くの喜びを得ていた。
●6ヶ月の時点で、KMC群の母親は乳児に対する感受性と積極的な相互作用を維持している。
●KMCを受けた乳児の一部は、ネガティブな感情を抑え、母親との再会時にポジティブな行動をとるようになり、自分の要求を表現をするのが上手で母親への反応が良好である。

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4. その他の知見(過去の研究から)

●NICU入院期間が長いほど、母親は乳児に対して敏感になる傾向がある。
●母親のうつ症状のレベルが高いと、親と子の相互作用にも悪影響を及ぼす可能性がある。
●KMCに関する一定の結論を得るには、母親の受ける医療スタッフからのサポートの最適化を医療機関で確立し、評価や分析方法を標準化した上で、長期的な研究が望まれる。
●触れ合いは初期の母子関係の重要な要素であり、初期の母子の相互作用を高め、母親と乳児の両方の心理的な幸福感を促進する。

5. どのような感想をもちましたか?

カンガルーケア、対応できる医療機関は限られると思いますが、実施できたときの母親の嬉しい気持ちは計り知れません。今回ご紹介した論文は、低出生体重児や早産児におけるカンガルーケアについて、各種研究を総合して分析したものですが、同様な効果は正産期で生まれた赤ちゃんとその母親においても、適応できるのではないか、と思います。
カンガルーケアとベビーウェアリングは赤ちゃんの姿勢が似ている点があること、密着すること、が共通点としてあるように思います。カンガルーケア、ベビーウェアリング、共に国内での研究を期待します。


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コメント

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