当団体で刊行した冊子「あなたと赤ちゃんにあう抱っこひも選びガイド」の深堀りシリーズ3回目をお送りします。
「抱っこひも選びガイド」の紙面だけでは伝えきれなかった内容を深掘りして紹介します。パパ・ママへ向けた、わかりやすい内容にしています。加えて、妊産婦さんに関わる医療者や子育て支援者等の方にとっても、それぞれの業務で活用いただける内容でもあると思います。ご意見、ご感想お待ちしております!
抱っこひも選びガイドは、次のような構成になっています。
今回は【2.パパ・ママの置かれている状況に合わせた、抱っこ紐の選び方】を取り上げます。
- 快適”素手抱っこ”を抱っこ紐で再現すること
- パパ・ママの置かれている状況に合わせた、抱っこ紐の選び方◀️
- 選び方のポイント①目的に合わせること
- 選び方のポイント②赤ちゃんの成長に合わせること
- よくある質問
- 抱っこ紐 装着の5つのポイント解説
1. どんな場面で抱っこ紐を使いたい?
赤ちゃんが生まれる前、出産直後、赤ちゃんがはいはいをする頃、歩く頃…。赤ちゃんの成長、親の仕事や生活スタイルなどで、育児用品に求めるニーズは変わってくると思います。
「選ぶもの」として、分かりやすいのが、靴選び。日常使いなのか、仕事用なのか、オシャレ用なのか。しっかり調整できる紐タイプ、さっと履けるサンダルタイプ、さっと履けるけど調整できる面ファスナータイプ…。自分の希望(ニーズ)に合わせて、靴屋さんの見るコーナーが変わってくると思います。
当団体では、抱っこ紐に求められるニーズを4つ想定しました。ガイドを手に取ったパパ・ママが、まず、自分のニーズに一番近いものを選びます。その上で、最も自分のニーズに合いそうな抱っこ紐を見ていくことができます。
抱っこ紐を選ぶ時のポイントとしては、目的に合わせること、赤ちゃんの成長に合わせることの2つを紹介しています。今後の深掘りシリーズで、ご紹介していきますね。
A 新生児期から使いたい
出産前の育児用品準備、小さくて可愛らしいものを選ぶのは、とても楽しいですね。育児用品の準備リストに「抱っこ紐」があることは多いと思います。
しかし、出産前に買う場合、よ〜く考える必要があるよ!というのが、当団体の伝えたいことです。
「選ぶポイント」にも記載があるように、次の点に留意したいです。
- 新生児はまだ身体が未熟なので、安全に使えることが特に大切
- 新生児に向いている商品もありますので、必要な方はぜひ専門家に相談
新生児期に抱っこ紐は必要か?
「新生児」といっても、何グラム、何週で生まれてくるのか、によっても使える抱っこ紐は限られてきます。また、里帰りなどで、新生児期に祖父母が家事・育児を手伝ってくれる環境がある場合はどうでしょう?祖父母があやしてくれたりすることから、案外抱っこ紐を使う場面がほとんど無い、ということもあります。
それでも、寝かしつけ、上の兄姉のお世話や付き添いがあり新生児期から抱っこで外出する必要がある。どうしても一人で家事・育児をこなす必要がある。そういった場面が予め想定される場合は、妊娠中に用意しておけると安心です。
実は、本ガイド作成中、監修の先生から、安全性の観点から、新生児期の抱っこ紐の使用は推奨しない、というご意見をいただきました。抱っこの専門家(ベビーウェアリングコンサルタント)としても、新生児期における抱っこ紐の使用が容易でないことも理解しています。しかし、どうしても必要な方がいることを想定し、どなたにもお役に立てていただけるガイドを作成したい。そういう思いから「新生児期から使いたい方」の項目を残しました。ただし、特に使用を推奨する記載はせず、「もし使うなら専門家に相談を!」という記載にしています。
安心・安全、そして、新生児期をゆったり堪能したい
特別な配慮が必要な新生児期は、赤ちゃんが安心できて、親が安全に使える重要度が高まります。コンサルタントに相談することで、選びやすくなると思います。ネットで検索するよりも、早く、確実な助言を得られることもあります。お気軽にご相談してみては、いかがでしょうか?
ただし、無理は禁物です。特に、産褥期(産後6〜8週間まで)は、家事・育児支援などを受けるのも良いと思います。産前・産後サポート・産後ケアは、多くの自治体で支援をしています(参考1)。ぜひ、調べてみましょう。何より、新生児期は短いです。ほんの短い、赤ちゃんとゆったり過ごす時間。その中で、お互いを見つめ合える、温かい気持ちを味わえますように。
B 手早く装着したい
とにかくサッと使いたい。そういう方もいらっしゃると思います。家事、ほんの少しのお買い物や、抱っこ←→歩く!が繰り返される時期。また、住んでいる環境によっては、自家用車での移動が多く、抱っこ紐を使うとしても短い時間に限られることもあります。そのような場面には、手早く装着できる抱っこ紐が便利ですね。
選ぶポイントは次の2つです。
- 着脱の手順が少ない商品を選ぶ
- ピッタリ合うサイズを見つける
手早く装着できるものにも、実はバリエーションが沢山あります。固定されたS・M・Lと決まったサイズから選ぶものや、紐の長さを調整できるものなど。詳しくは、次の深掘りで解説しますが、いづれにおいても大切なのは
「自分たち親子に合っているか」です。その目安として次のようなものが挙げられます。
目安1 落下の危険がなく、安全に使用できる
目安2 密着できる
目安3 高めに抱っこできる
目安4 親子ともに負担がなく、快適
これらの目安は、パパ・ママの状況A〜D、いづれのタイプであっても大切にしたい目安です。シリーズ後半でも、詳しくご紹介します。
手早く装着できるタイプは、いつから使える?
手早く装着できる抱っこ紐は忙しいパパ・ママにとっては魅力的だと思います。ただし、装着できる時期はしっかり調べた上で選ぶことを強くお勧めします。製品説明には、月齢や体重で使用可能時期が表記されていることがあります。一方、赤ちゃんの発達の様子は人それぞれです。道具は、安全に使えてこそ、便利なものになります。焦らず、しっかり調べる。それが難しい場合は、コンサルタントに相談するのも一つの方法です。
C 身体の負担を減らしたい
ベビーウェアリングコンサルタントが抱っこの相談を受ける時、一番多いかもしれない悩み。それが「〜〜が痛いので、どうにかしたい」。実は、首、肩、腰を痛めながら、赤ちゃんをどうにか抱っこしているママがとても多いです。特に、産後1年程度まで約2人に1人は腰痛を訴える方が多いそうです(参考2)。また、4〜5名に1名は帝王切開を経験するということから、術後の傷や体に負担がかからないものが必要な方もいます。
まずは痛みの原因を取り除くことが先決で、休養も必要な場合があります。一方で、「抱っこをしなければいい」とは言い切れない状況や事情があることも事実です。例えば、抱っこをしたい・してあげたいという気持ち、もしくは、抱っこせざるを得ない状況もあると思います。そんなママ・パパには、抱っこする大人を支えてくれるような、抱っこ紐を選択することが大切です。
ポイントは、次の通り。
- サポート力があり、赤ちゃんの体重を大人の身体全体に分散することができるもの。
広い面積で重さを受け止める
重さを分散させるために必要なこと。それは、広い面積で体に触れる、ということ。机を持ち上げて運ぶ時、指一本と両手、どちらが運びやすいでしょうか?両手ですね。
指一本ですと、指も腕も痛くてプルプルしてしまいます!両手2本で、重さを分散させることで、持ち上げることができます。
赤ちゃんの抱っこもこれに似ていると思います。上図の左側、小さい面積で赤ちゃんの重さを支える場合は、小さい面積だけに重さが集中しやすいです。一方、上図の右側ではどうでしょうか?矢印が増えています。矢印が増えると、より多くの場所で赤ちゃんの体重を受け止めていることになります。このように、できるだけ広い面積で支えることができると、大人の体の負担を軽くすることができます。
また、赤ちゃんが大きくなったら、おんぶを選択肢に入れることもおすすめです。大人が大人をおんぶできるように、重たいものは、背中の広い面で支えると、負担が少なくなります。次項のおんぶも見てみましょう!
D おんぶがしたい
赤ちゃんが大きくなると、抱っこの他に、おんぶも出来るようになります。赤ちゃんにとっては、高い目線で大人と同じものを見渡せて楽しいものになると思います。また、大人にとっては、両手が空き、前を遮るものがないため、家事や他の子どものお世話も捗るかもしれません。
抱っこが出来る製品でおんぶをしたり、おんぶだけの製品もあります。どんな場面で使うのか、をよくイメージ出来ると、自分にあうものを選びやすくなると思います。
また、「いつからおんぶが出来るの?」といったご質問もよく伺います。製品によって、おんぶ出来る時期が異なりますので、取扱説明書やメーカーのホームページなどで確認することをお勧めしています。
あとがき
ちょこっと裏話
実は、今回ご紹介した、A〜Dのタイプ別解説ページ、最初は存在していませんでした。監修の先生のご意見を受け、大幅に見直し、現在のA〜Dの場合分けのページが作られました。当初、設定した場合分けは、なんと10タイプ!議論に議論を重ね、ベビーウェアリングコンサルタントが抱っこの相談の現場でよく聞く、パパ・ママの声を元に、今のA〜Dの4タイプにまとめました。
知る機会をどなたにも
「あなたと赤ちゃんに合う 抱っこひもの選び方ガイド」は、手にとる方々がいろんな状況であることを想定して作成されました。抱っこは生まれたその日から始まり、場合によっては、小学校入学以降も続くこともあります。育児動作の中でも、長い動作と言える「抱っこ」ですが、抱っこの仕方、抱っこ紐の選び方を改めて習っている方は多くありません。道しるべとなる本ガイドを利用することで、抱っこ紐にいろんな種類があること、選ぶ時におさえておきたいポイントを、どなたにも参考にしていただけたら幸いです。
参考文献・サイト
- 産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン(厚生労働省、202年8月改訂)
- 妊産婦に対するウィメンズヘルス理学療法(平元奈津子、理学療法の臨床と研究 第 27 号 2018 年)
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日本ベビーウェアリング協会では、抱っこ紐を安全・快適に使用するためのポイント解説をした資料を作成・公開しています。自由に閲覧、印刷などしてご利用できる他、印刷版の受注も承っています。
地域によっては、子育てひろばや自治体の窓口に置いている場合もあります。お住まいの地域の近隣に置いている場所をお調べすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。
コメント
[…] 定しています。それぞれに、注意点があります。ご自分の「抱っこ紐を使いたい目的」に近いものを読んでみましょう!目的の背景など、詳細については前のブログもご参考ください。 […]